第100話で、戦争から戻ってこれていない自分に涙し「故郷に帰って家族と過ごす時間で自分を取り戻せるかもしれない」と言っていた杉元。
全てが終わったら杉元の故郷で干し柿を食べたいと言っていたアシㇼパさん。
このエピソードを読んだ時から行ってみたいと思っていた杉リパの聖地、大雪山。
干し柿を食べた杉元が何を思うのか、そもそも干し柿を食べれるのか。
最終話までハラハラドキドキさせられましたが、野田先生は穏やかな着地点を用意してくれていました。
原作をなぞるという意味ではあまりふさわしくない時期の聖地巡礼になりましたが、大雪山にはこんな一面もありますよのご紹介になればと思います。
ところで最終話で杉元が「故郷へ帰ろうアシㇼパさん」と言いましたが、あれは「家族になろう」の同義語と考えていいんですよね?
旭川空港から大雪山へのアクセス
旭川空港から大雪山までは「いで湯号」という旭岳行きのバスで約1時間。
このバスは1日に4本しかないので、ご利用の際はぜひ時刻表をご確認ください。
旭川の雪道を運転するのはさすがに無理なので公共交通機関を駆使して巡礼しましたが、今回ほど「レンタカーがあればなぁ」と思ったことはありませんでした。
旭川にはたくさんの聖地がありますが、どこも微妙に離れています。
バスがないわけではないですが本数は少なく、タクシーだとそこそこのお値段がかかる距離。
簡単ですが今回行った聖地の位置関係をご紹介するとこんな感じです。
現在橋の工事中と聞き巡礼を見送った神居古潭は旭川駅から大雪山とは反対側にあります。
雪道の運転に慣れている、または雪道でない時期に旭川の聖地巡礼をする、という場合はレンタカーを借りた方が効率よく回れると思います。
旭川空港でバスを待っていると、向かいにスキーを持った軍人さんの像が見えました。
・・・もしかして第七師団の誰かだったりする?
と近寄ってみると、スキーの伝道のために1912年(明治45年)に旭川にやってきたテオドール・エードラー・フォン・レルヒというオーストリア=ハンガリー帝国の軍人さんの像であることがわかりました。
第七師団にもスキーを教えたそうですが、年号からして谷垣や玉井伍長がいた時より少し後のことのようです。
レルヒさんが右手に持っている1本杖は今でいうストック的なもの。
レルヒさんがもう少し早く旭川に来ていたら、あのシーンの谷垣たちは2本のストックではなく1本杖を使って滑っていたかもしれませんね。
逆光でよく見えないですが「THEODOR VON LERCH」とお名前が刻まれています。
大雪山について
原作にも説明がありますが、大雪山は北海道中央に位置する標高2,000m級の山々の総称です。
「大雪山」という山があるわけではないので「大雪山系」と表記されることも多く、私が訪れたのも大雪山の最高峰「旭岳」でした。
私は大雪山がどんなところか全く知らなかったので「ふもとから大雪山が拝めればいいかな」と考えていました。
しかし公式サイトを見てみると、大雪山旭岳には山の中腹まで行くロープウェイがあることがわかりました。
気候の良い時期の登山用かと思いきや、冬期もちゃんと動いている。これはありがたい。
とはいえ天候が悪かったら当然運休でしょうし、動いてたとしても視界不良でなんにも見えない可能性大。
お天気の回復を待てるほどスケジュールに余裕はないので、行った時に晴れていなかったらそこで試合終了です。
それはわかっていたのですが、それでも大雪山がどんなところなのかこの目で見てみたい。
私が行った日、旭川空港周辺は晴れていたので希望は持てましたが、山の天気は変わりやすいと聞きます。
旭岳行きのバスの中で、この天気が続けばいいなぁと思っていました。
大雪山旭岳ロープウェイ
大雪山のふもとにあるロープウェイ乗り場に到着。
良かった、晴れてる!
建物の裏に大雪山旭岳が見えます!!!
念願の大雪山。
すごくきれいです。
早速ロープウェイ乗り場に向かいましたが、建物に入ってびっくり。
しかもなぜかほとんど海外の方(アジア人ではなく欧米人)。
ロープウェイはフル稼働です。
バスはとても空いていたし、私は「この雪深い時期に大雪山観光する人なんていないだろう」と思っていました。
根っからのインドア人間なので、「冬山=スキー」という発想がなかったんですね。
自分の価値観で物事を決めつける典型的な悪い例です。
いやはやお恥ずかしい。
チケット売り場に行くと、受付の人が「2,200円の往復チケットでいいね。行きは混んでるけど帰りは貸し切りだからね」「展望台に行くなら長靴貸し出してるよ」「誰かが歩いて道ができてたら第一展望台までは行けるよ」と親切に色々と教えてくれました。
公式サイトには記載されていませんが、5,000円くらいの1日券も売っていました。
どうやらスキーヤーたちはこのチケットで登っては滑りを繰り返し、1日中パウダースノーを楽しんでいるらしい。
チケットを購入しロープウェイに乗る列に並びます。
・・・周りの方々の圧がすごい。
ただでさえガタイがいい上に、スキー板もボードもめちゃくちゃでかくてごついんですよ。
さらにバイクに乗る人がかぶるようながっしりしたヘルメットとゴーグルをしていて、明らかにレジャーではない装備。
確かに観光で来ている人はいなかった。
なめくさった格好で大雪山に登ろうとする私の場違い感、半端なかったです。
2巡くらい待ってロープウェイに乗車。
みなさん壁にスキー板やボードを立てかけているので景色は帰りに楽しむことにして、英語が飛び交うロープウェイの中心でおとなしくしていました。
姿見駅
姿見駅を降りると、目の前に広々とした雪原と美しい大雪山旭岳が見えました。
まさに絶景。
晴れていて本当に良かった。
これはカムイのおかげでしょうか。
ありがたやありがたや。
この日の積雪量は2m弱。
一緒に登ったスキーヤーたちはさらに歩きで山頂方向に行く人、右に行く人左に行く人、各方向へ散ってしまったので、どの足跡をたどれば展望台に行けるのか皆目見当がつきません。
てか展望台、どこ?
ロープウェイを降りて右手に足跡がたくさんあったのでこの集団について行ってみました。
このくらい足跡がついていても歩くの結構大変。
以前北海道で購入したスノーブーツを履くなど雪道対策はしていきましたが、まっさらのところを歩くと膝くらいまで沈んでしまうので、くっきり見えている足跡の上を止め足方式でたどっていきます。
背が高く足の長い人の一歩をたどるのはなかなかに難儀だったので線路状になっているスキーの跡の上を歩いてみたのですが、ここは新雪と変わらず、ずぶずぶと沈み込みます。
杉元が雪の中を歩くのに苦労していましたが、その気持ち、わかる。
歩きにくいことこの上ないパウダースノー。
がんばって坂道を登ったのに、その先にあったのは一面に広がる雪原のみ。
近くにいた日本人の方に聞いてみると、どうやら展望台はロープウェイを降りて左手にあるらしい。
「多分こっちだろう、みんな行ってるし」と確認もせずに見切り発車するの、方向音痴のホント悪いクセ。
お話ついでになぜこんなに海外の方が多いのか、皆さんどこのお国からいらしてるのかも聞くと「ヨーロッパの人も多いけど今日来てるのはほとんどオージーだね。南半球にはこういうパウダースノーはなかなかないからここは人気なんだよ」と教えてくれました。
なるほど。
確かに雪質はものすごく良いです。歩きにくいけど。
お礼を言って来た道を戻り、さらに進んで10分ほど歩くと第一展望台らしき場所に到着。
第一展望台からの景観。
手前に見えている茶色いのはちょこっと顔を出したテーブル部分です。
ベンチ部分は完全に雪の中に埋まってました。
写真の撮り方下手すぎてよくわかんないですね。
申し訳ない。
視界は良好で最高の眺め。
振り返ると大雪山旭岳が少し近くなっていました。
なんかもくもくしています。
望遠で撮ってみました。
もくもくしてる場所に何があるのか、気になりますよね。
行って確認したい衝動に駆られましたが落ち着いて!
目印になるものがないから距離感がわかりにくいけど、多分めちゃくちゃ遠いやつ。
帰ってきてから公式ホームページを確認したら、ちゃんと地図が載っていました。
もくもくの上がっている場所はおそらく第五展望台にある姿見の池のあたり。
展望台、第五まであったんだ・・・。
いやその前にこの地図をちゃんと見てから行けば第一展望台がロープウェイ降りて左手だってわかったのに!
肝心な時に地図を見ないんですよね、方向音痴というやつは。
この地図によると第五展望台までは40分くらいで行けそうな感じですが、それはあくまで雪のない時期の話。
欲望のままに進んでいたら片道1時間半はかかってただろうから、ロープウェイの最終便にも帰りのバスにも間に合わなかったかもしれません。
今回はあきらめざるをえませんでしたが、第二第三展望台の付近にある夫婦池も気になるし、これはリベンジするしかないですね!
次回は地面の見える時期に訪れることを誓い、姿見駅に戻ります。
ロープウェイを待っていると、係の方に「今日は晴れたし暖かくて良かったですね」と言われましたが、この時の気温はマイナス11度。
そこそこ着込んで行ったこともあり確かに体感はそれほど寒くないんですが、写真を撮るために手袋を外しているとすぐに手が痛くなります。
日差しもあるし風もほとんどないのに、空気がとにかく冷たい。
もし冬に大雪山に登られるという方がいらしたら、手袋はスキー用のものをご準備ください。
時間が経つにつれて耳も痛くなるので、帽子があるとなおよしです。
コートのフードを被ってもいいんですが、視界が狭まるので危険かも。
私は霊感もないしスピリチュアルなものに鈍感なのであてにはなりませんが、大雪山からはなんだかものすごく巨大なエネルギーを感じました。
しかしそれと同時に「死」の気配も感じました。
生きることと死ぬことは表裏一体。
生を強く感じるからこそ、死が色濃くなるとでも言いましょうか。
とても美しいのに厳しく怖い。
言葉で説明するの難しいんですが、圧倒的な自然の前では人の命の火などちっぽけなものでいとも簡単に吹き消されてしまうんだろうな、とか、ここでは自分の生き死にを自分の意思ではコントロールできないんだ、という恐怖感からくるものだったのかもしれません。
杉元は、こういう自然の中でたくましく生き、共存してきたアシㇼパさんに自然と同様の神々しさを感じたから敬意を持って接していたのかな、と思いました。
ロープウェイからの景観
下山するロープウェイは予告通り空いていたのでゆっくり景観を楽しみました。
スキーなんてもう何年も行っていないので今はどうなのかわかりませんが、私が過去に行ったスキー場ではロープウェイの真下がゲレンデになっていて、楽しそうに滑る人たちを見ることができました。
でも大雪山のロープウェイ周辺にはゲレンデらしきものが見当たりません。
しかし山の斜面をよく見ると・・・
木の合間を縫って滑る玉井伍長たちを発見!
木の生え具合といい、滑り降りるスピード感といい、まさにあのシーンです。
ゴールデンカムイ第2巻第8話「逃走」より
一応ほっそいゲレンデはあるらしいです。
でもここにきている猛者たちは、ゲレンデではなく、こうやって思い思いのコースを滑り降りているようです。
まさかこんなところで第七師団ばりの滑りが見れるとは!
谷垣たちもこの大雪山でスキーの訓練をしたかもしれませんね。
それにしても、現在のスキーヤーたちと比べ、第七師団の面々のなんと軽装なことよ・・・。
ケガする人や死んじゃう人、結構いたんじゃないかなぁ。
ロープウェイからゲレンデは見えませんでしたが、動物の足跡は見えました。
中央付近にある一直線の足跡、見えますでしょうか?
最初ウサギかなぁと思ったのですが、同乗している係の人に聞いたところキツネの足跡だそうです。
積もった雪の下って空洞になっていて、そこにいるネズミを狙ってウロウロしているんですって。
鹿もどこかにいないかなーって探しましたが、残念ながら見当たりませんでした。
大雪山では会えませんでしたが、鹿は人里にもたくさんいて道路に突然飛び出してくることも多いと聞きましたので、お車で旭川観光される際は十分お気を付けください。
ロープウェイを降りると、お食事処やお土産屋さんがありました。
(行く時は人の壁で全然見えず、気付きませんでした。)
お土産屋さんにはホットスナック売り場があって、そこでいも餅を発見!
さっくさくでもちもちのいも餅に甘いたれがかかっていて絶品でした!
いも餅は開拓の村で食べて以来大好物です。
居酒屋とかでたまにメニューにあったりしますが、北海道で食べるいも餅が一番うまい!
他にもカレーパンやコロッケなどが売っていて、どれもとてもおいしかったです。
お時間がある方はぜひお立ち寄りください。
アシㇼパさんのおかげで守られたカムイミンタラ(神々の遊ぶ庭)。
杉元たちは雪のない時期に登ってましたし、高山植物や紅葉などを楽しめるので聖地巡礼するなら6月~10月くらいがベストシーズンだと思います。
でも雪の大雪山も素晴らしかったので、ウインタースポーツ大好きという方には冬もおすすめ。
お好みに合わせた時期に訪れていただけたらと思います。
おまけ
帰りのバスを待っている時に見たふもとにあるホテルのつらら。
やばくないですか?
間近で見たらめっちゃとんがってました。
こんなん落ちてきたら死にますね。
旭川では飛び出す動物と共に、頭上にもご注意ください。
ゴールデンカムイ聖地巡礼へのリンク
函館① 五稜郭編
函館② 北方民族資料館&大沼だんご編
網走① 網走監獄編
網走② 北方民族博物館&オホーツク流氷館編
登別温泉 登別クマ牧場編
札幌 北海道開拓の村編
番外編 アイスホッケー試合観戦編