第四期第七話「樺太脱出」。
アシㇼパさんと鶴見さんが初対峙する回。
そしてイケメンな杉元が見れる回。
ネタバレを含みますのでたたみます。
最終話までの内容に触れてますので、原作未読のアニメ派の方は閲覧どうぞご注意ください。
鶴見さん、ヤバいですね。
杉元も谷垣もアシㇼパさんに「大丈夫だよ」って言ってましたが、全然大丈夫じゃない。
この脳汁ボタボタな鶴見さんを初めて見た時は、私も周りの兵士同様「え、急にどうしちゃったの?!」って思いました。
当時私は鶴見さんの奥さんと娘さんは流れ弾に当たったんだと思ってたので、鶴見さんがそこまでウイルクを恨んでいるとは思ってなかったんです。
でも最終話まで読んだ今ならこの時の鶴見さんの気持ち、わかる気がします。
鶴見さんは最後の最後までアシㇼパさんにウイルクの姿を重ねていました。
ウイルクと同じ目を持つアシㇼパさんを見ると、反射的にウイルクへの憎悪が脳汁となってあふれ出してしまう。
軍人としての野望のためにはどんな優しい嘘もつけるけど、ウイルクのこととなると理性を保つことすら難しい。
原作も見ごたえがありますが、鶴見さんの不安定な精神状態を笑いとも呻きともとれるような声色で表現した芳忠さんが神すぎる。
自分に対してこんなにも敵意丸出しの鶴見さんが、アイヌのためになにかしてくれるとはとても思えない。
鶴見さんとウイルクの因縁に考えが及ばなかった私でも、アシㇼパさんがこの場から逃げると決めたことが納得できたであろう鶴見さんを見せてくれた芳忠さん。
・・・もしかして芳忠さんって本当は鶴見さんなんじゃないかしら。
これまで鶴見さんのどんな命令にも従い、淡々と任務をこなしてきた月島。
彼が鶴見さんの言葉にこんなにいちいち感情あらわに反応することなんてありましたっけ?
大体(毒)矢が放たれた時、以前の月島だったらいの一番に鶴見さんをかばっていたはず。
鶴見さんの隣にいるのにこれまでの月島ではない月島を見て、本当に月島は変わったのだな、と改めて思いました。
複雑な想いを抱えつつも、任務をおろそかにはしない月島軍曹。
反旗を翻した杉元に容赦なく銃口を向けます。
本当に撃つつもりなのかと月島の真意を探るような表情をする杉元ですが、ここにいるのはもはや自分と一緒にスチェンカしたりサーカスに出た月島でありませんでした。
杉元が撃たれるシーン、原作では全弾致命傷かと思うくらい迫力がありましたが、アニメではそんなでもなかったですね。
そして原作一かっこいい「俺は不死身の杉元だ!!」。
ここはさすがに力が入った作画でした。
でも私は原作のちょっと目の焦点があってないように見える杉元も好きです。
この世のものを見ているようで見ていない、狂気の世界にいっちゃった感じがたまらない。
ここからの杉元の立ち回りは原作でも大好きなシーンのひとつです。
特に銃剣を外してなんのためらいも無駄な動きもなく兵士の顔を刺すところがいい。
こんなこと言ったら人間性を疑われそうですけど、こういうことが躊躇なくできる杉元のイカレ具合が好きなんですよ。
だからもうちょっと手ごたえのある感じの描写にしてくれたら良かったかなぁ。
さくっと刺さり過ぎてて、なんだか物足りないというか・・・。
いや、でもここは刃物の鋭利さとか刺さる勢いを感じさせるためにそうしたのかもしれない。
いずれにしても、ここら辺のシーンはもうちょっと長く、そして緩急のある映像で見てみたかったです。
・・・すみませんね、思い入れのあるシーンにはつい欲が出てしまって。
一瞬だから見逃しそうだけど、銃身で兵士の頭をかち割った時、後ろ手に持ってたはずの銃剣もないですね。
あれ持ってた方が良かっ・・・いや、本当に申し訳ない。
杉元に対しては冷静な判断と行動ができた月島ですが、鯉登さんのこととなると話は変わってきます。
刺された鯉登さんを抱き上げ、刃物を抜こうとする鯉登さんの手を制する月島の手が私的には萌えポイントでした。
なんでかわかんないけどめちゃくちゃいい。
鯉登さんに優しい言葉をかける一方、一瞥くれるだけの鶴見さんを見て「心配するフリくらいしてもいいじゃん」と反抗的な目を向ける月島。
樺太に行く前は、鶴見さんにこんな態度をとる子じゃなかったのに・・・。
ちなみに鶴見さんのこの表情、私は「使い物にならなくなった鯉登さん」に向けたものだと思ってたんですが、金塊争奪戦名場面選手権の先生のコメントを読んで「月島に対する冷たい目」であることがわかりました。
己の理解力のなさを痛感すると同時に、月島の変化、鶴見さんは全てお見通しなんだなと恐ろしくなりました。
樺太の旅を経て心が動き出した月島を表現した竹本さんの芝居、素晴らしかったです。
芳忠さんの鶴見さんもだけど、アニメはこうやって原作の解像度を上げてくれるから観るの楽しい。
竹本さんのおかげで、今後の月島から益々目が離せなくなりました。
傷ついた杉元の手を引くアシㇼパさん。
原作ではちょっと曖昧な感じでしたけど、アニメでは杉元がアシㇼパさんの手にぶらさがってる様子がちゃんと描かれていました。
不死身と言われ誰にも頼らず弱みを見せない杉元が、アシㇼパさんにはこの態度。
危機的状況にもかかわらずこのシーンがとても官能的に見えるのは、傷付いた杉元がアシㇼパさんとの距離をぐっと詰めたように思えるからかもしれません。
馬に乗せてもらえなかった谷垣が踵を返すの、ちょっと早くないですか?
原作にはないシーンだからそう思うのかもしれないんですけど、もう少し余韻があっても良かったかなぁ。
でもこの姿を入れることで、谷垣が自分の意思で完全に軍から離脱し「マタギに戻る」決断をしたことを表現したかったのかも。
ここでの菊田さんの「はぁ?」が思った以上に「はぁ?」だったのが堀内さんの菊田さんって感じでつい笑ってしまいました。
船でしゃがんでる頭巾ちゃんが原作よりかわいらしく見えるのなんでだろうって思ったら、多分柵につかまってるからですね。
フンフンはわりと渋めの言い方ですが、動作が相変わらずかわいい。
でもスナイパーとしてのヴァシリはやはり一流です。
アシㇼパさんには足を撃てと言われたけど、追跡を阻止するなら生かしておくのは得策ではない。
双眼鏡を持っていたから足を撃ったんじゃないってわかっていただろう白石が、青ざめながらも「よくやった」と言ったのは、アシㇼパさんには悪いけど、ここはヴァシリの判断が正しいと思ったからなのでしょう。
ここでも鯉登パパを利用する鶴見さん。
追撃に失敗しても、責めるでもなく怒鳴るでもなく。
こういう圧が一番怖い。
しかし宇佐美の菊田さんに対する態度はひどいですね。
この「うるっさいなぁ・・・!」はお母さんに対する反抗期の息子の言い方です。
少なくとも上官に対する態度ではない。
菊田さんって本当に懐の深い男です。
ハチャメチャなノラ坊にも寛容でしたもんね。
それにしても菊田さん、野田先生もかっこよく描くの難しいっておっしゃってたけど、もうちょっとなんとかならんかったのかなぁ・・・。
白石は、自分たちで金塊を見つけて使い道を決めることにしたと聞いて「どうやって金塊を見つけんのよ」とあきれながらもちょっと嬉しそうでした。
白石がアシㇼパさんを引き渡すことに反対だったのは、鶴見さんに金塊が渡ったら自分の取り分が保障されないから。
というのももちろんあったと思うけど、アシㇼパさんやキロランケの「アイヌを守りたい」という想いが実現しないとわかっていたからなのでしょう。
キロランケがアシㇼパさんを樺太に連れて行ったのはアイヌの現状をアシㇼパさんに知ってもらうためでしたが、一緒にいた白石もそれらを見て思うことがあっただろうし、みんなを裏切ってまでそうしたキロランケの気持ちも理解できたのだと思います。
布団の中でキロランケの胸の内を聞いた白石、複雑な表情してますもんね。
・・・それにしてもちょっとくっつきすぎな気がします。
樺太の夜は寒かったのかな?
紆余曲折ありましたが、再集合したゴトリのチームワークはここから盤石なものになりました。
博打好きの白石が「自分たちで金塊を探す」というふたりに本気で賭けることにしたからかもしれないけど、杉元と離れて、白石も杉元の大切さに気付いたんじゃないかなと思います。
杉元に会えた時の白石、すごく嬉しそうでしたよね。
とうとう暗号が解けたことを杉元に打ち明けたアシㇼパさん。
優しい笑顔の杉元、めちゃくちゃイケメンです。
先ほどのバーサーカーとの比較映像が流れますが、同一人物とは思えない。
ニセアイヌでは惨殺モードの杉元にドン引きしていたアシㇼパさんでしたが、ここでは戦う杉元から目をそらしませんでした。
杉元の全てを受け入れ、必要とあらば杉元と地獄に落ちる覚悟を決めたアシㇼパさん。
相棒としての覚悟だということはわかってますが、杉元が自分にとって大切な人だと自覚したことは間違いない。
少女漫画だったら「ドキッ」ってなるところだけど、そうじゃないのがゴールデンカムイの良いところ。
そんな妄想をするのが申し訳ないくらい、重みのあるアシㇼパさんの決意でした。
ええ!!!
白いクマ・・・ないの?
ドンブラコもクリオネも?!
(※クリオネは一部道画劇場で期間限定配信中)
ここは「ページをめくったら別世界」というゴールデンカムイならではのふり幅の大きさを楽しめる重要な場面なはずなのに!
シーツを取られたおばあさまがカットされちゃったのも残念だったけど、そうかー、ないのかー・・・残念。
悪い顔をしていやらしい話をするアシㇼパさんや、グーンッてなってるヴァシリ、見たかったなぁ。
杉元が下品なこと言うからカットされちゃったのかしら。
尺の問題もあるから仕方ないんだろうけど、ここはいつか何らかの形で見せてほしいですね。
兵士にちゃんとコートかけてあげる尾形、優しい。
子どもにも決して横柄な態度を取らず、意外とフレンドリー。
尾形って本来真面目で優しい男なんですよね。
そしてメコオヤシの話がここへきて伏線だったことが判明。
尾形については全ての言動が緻密に計算されていたんじゃないかと思ってしまいます。
登場時間は短いですが、作画もいいし見ごたえ十分。
船長さんは憤ったり泣いたり、情に厚い方でした。
棒ダラを差し出す尾形、アシㇼパさんの前では仮面が割れてしまいましたが、船長の前ではうまく演じ切ることができましたね。
アイヌの小舟に乗せてもらって北海道へ帰還した杉元一行。
次回はいよいよ平太師匠が登場です。
私は平太師匠って高めの声のイメージなんですけど、一体どんな平太師匠になるんだろう。
石田さんの平太師匠、全然想像できない!楽しみ!!
それにしても船に乗ってる頭巾ちゃんの顔・・・船酔いしちゃったのかな?
「樺太脱出」は、これからと、これまでのお話の分岐点となるような回でした。
再開された第四期のアニメ、声優さんの熱演もあってすっごく見ごたえがあるんですけど、ちょっと気になるのがみんなが吐く白い息。
寒いんで、ないのは不自然ってのはわかるんですが、動きに合っているようで合っていない時も多く、なんかこう違和感があるというか・・・。
観てるうちに慣れるかなと思ったんですけどなかなか慣れないもんですねぇ。
次のお話
ひとつ前のお話
頭巾ちゃんが杉元たちを助けた理由を妄想した漫画