ゴールデンカムイ第313話「終着」。
本誌の内容にふれているのでたたみます。
長くなったので目次つけますね。
ざっくりとしたあらすじ
杉元の振るった和泉守兼定により、鶴見さんの身から離れたホーローと権利書。
斬られた胸元からは、奥さんと娘さんの骨がこぼれ落ちます。
権利書か、骨か。
鶴見さんは権利書を選びます。
その結果、汽車に砕かれる骨。
鶴見さんから権利書を取り戻そうとして汽車から落ちそうになるアシㇼパさん。
杉元は手を伸ばしますが、奪われた和泉守兼定で胸を貫かれてしまいます。
杉元は力を振り絞って、アシㇼパさんを追っかけてきた谷垣と白石に放り投げます。
汽車は杉元と鶴見さんを乗せたまま海へ落ち、沈んでいきました。
残り一話というところでこの展開。
「次号、大団円」の言葉に「ほんとかよ!」とツッコんだのは私だけではないはずです。
鶴見篤四郎の素顔
先週ドシュッッってなったので、鶴見さん半身が削られちゃったかな?と思いましたが、よく考えたら刀でホーローは切れませんね。
案の定切れたのはホーローを留めていたベルト。
もちろんそれだけじゃなく、権利書を入れた矢筒の紐も、軍服も切れてしまいました。
そしてこぼれ落ちる形見の骨。
いつも胸の内ポケットにしまって、肌身離さず持ってたんですね・・・。
権利書と形見の骨の二択。
ここで権利書を取ったことで、ビール工場で月島に聞かせたことは嘘ではなかったことがわかりました。
しかし汽車に砕かれてしまった骨を見る鶴見さんのこの顔!
ページをめくった時、思わず声が漏れてしまいました。
アイヌの村でウイルクの名前を聞いてちょっと瞳孔見えたことありましたけど、長谷川幸一でなくなった時から、全く表情が読めない、読ませない黒目だった鶴見さん。
それが骨を失った時に、こんな目をするなんて。
表情を作る時も描く時もすごく重要なパーツである眉毛がないのに、これほど複雑な顔を見せてくれる野田先生の画力半端ない。
鶴見さんのことずっと謎で、もちろん今回その全てが明らかになったわけではないですが、この顔を見たら鶴見さんの気持ちが少し理解できた気がしました。
月島に聞かせたように、鶴見さんには日本国の繁栄という大きな目的があった。
個人的な弔いは小さな小さなものだって言ってたけど、これは多分鶴見さんの月島への甘い嘘。
確かにそれのために道をそらすことはなかったけど、小さいと言っていたその弔いは、本当は鶴見さんにとってとても大きく大切なものだった。
尾形の時もそうでしたが、「・・・とか言ってホントは違うんじゃないの?」って私はいつも疑っていましたが、尾形も鶴見さんもずっと本当のこと言ってたんですね。
なかなか本心見せないキャラだなって、勝手に思っていたのか思わせられていたのか。
セリフで説明したら多分数ページ使うだろうに、こうやって表情だけの1ページで読者に全てを悟らせる。
もちろんそれはここまでの経緯があってこそ。
結局野田先生の手のひらの上だった、ってことでしょうか。
このページ見て声出ちゃった理由はもうひとつあってですね、ホーローのない鶴見さんの顔が描かれたことにびっくりしちゃったんですよ。
これをここでこんな風に見せるのかって。
ちなみに鶴見さんのホーローの下、どんな風になってるのかなってのは誰もが一度は考えたことあると思います。
脳みそが欠けてて脳汁がたまに漏れ出ちゃうってどういうこと?とか、頭蓋骨が一部吹っ飛んだっぽい描写あったけど脳むき出しってことはないよね?むき出しだったらお風呂とか大丈夫?ばい菌入ったりしない?とか。
でもそれは単なる興味本位というか、怖いもの見たさというか、本編には全然関係ないので、気にはなるけどここは描かれなくても誰も文句は言わないでしょう。
今回それを見せてくれたこと、もちろんどうなってるか知りたいという読者(私)に教えてくれるためじゃないのはわかってます。
この稀有な見た目は鶴見さんの得体の知れなさを強調する要因のひとつでもあったので、ただそれだけのためにホーローを着けさせていたって思う人もいるかもしれないけど、そうじゃないんだと。
ずっと本心を見せなかった鶴見さん。
ここでこの仮面を取ることで、野田先生は鶴見篤四郎の本当の顔を見せたかったんではないかなと思いました。
大切なもの
鶴見さんが骨に気を取られている隙に、矢筒の紐を切り、アシㇼパさんは権利書を取り返します。
杉元は、バランスを崩し汽車から落ちそうになるアシㇼパさんの手をつかもうとしたところ、鶴見さんに和泉守兼定を奪われ、胸を貫かれました。
鶴見さんも杉元も大切なものに気を取られたから隙が生まれてしまったんですね。
和泉守兼定は、完全に杉元を貫通。
ショックを受けるアシㇼパさんに鶴見さんは「愛するものが殺されるのは全部お前の責任だ、ウイルク」とたたみかけます。
これはアシㇼパさんにかけた言葉というより、青い目の向こうに見えるウイルクへの恨み事。
形見の骨を失った鶴見さんの目はまた真っ黒に戻ってしまいました。
溢れる脳汁が、ウイルクへの強い憎しみをこれでもかと感じさせます。
鶴見さん、本当に奥さんと娘さんを愛していたんですね。
主人公サイドから見れば、鶴見さんは杉元やアシㇼパさんを追い詰める悪魔みたいな人ですが、鶴見さんから見ればアシㇼパさんは奥さんと娘を殺した仇の娘。
家族を殺された主人公が仇を討つって話は数多あるし、大切なものへの想いゆえの行動は見方によっては正義です。
視点を変えればどちらも間違っていないから、鶴見さんのこういう姿を見るのが辛い。
俺は不死身の杉元だ
胸を貫かれても、全然動けちゃう杉元。
アシㇼパさんの手をつかみ、谷垣と白石の方へ放り投げます。
この投げ方、杉元の命を救った寅次を彷彿とさせます。
杉元は死なないで。
最終章に入ってから、五稜郭でも、地獄行き列車でも、なかなか「俺は不死身の杉元だ!」って言いませんでした。
言わないで終わるってことはないだろうから、言うとしたら尾形か鶴見さんと対峙した時、それなりの深手を負いつつも相手にとどめを刺す時とか、アシㇼパさんをかばう時かなって思ってました。
実際今は胸に刀が刺さってるし、状況はかなりピンチだし、直前まですごい顔してる。
だからこれまでみたいに鬼の形相で、自分を鼓舞するために叫んでも全然おかしくなかった。
それなのに、ここで自分のためでなく、アシㇼパさんを安心させるためにそれを言った杉元。
しかもこんな優しい顔で、優しい言い方で。
・・・余計心配になるじゃない。
アシㇼパさんと出会ってすぐ、ヒグマの下から引っ張り出してもらう時、絡みつくみたいな手のつなぎ方したじゃないですか。
今回アシㇼパさんがマキリを持ってたからそのつなぎ方できませんでしたが、私はまたあのつなぎ方が見たいです。
地獄行きの特等席
暴走列車は速度を緩めることなく駅舎に突っ込みます。
機関車の前にある、泥よけ?雪よけ?名称わかんないんですけど、杉元たちはフェンスみたいなのの上にいるから駅舎との間にはさまれずに済みました。
杉元は鶴見さんから銃を奪い、その胸を撃ち抜きます。
顔を上げた鶴見さんの目は真っ黒に塗りつぶされ、まさに死神の様相。
杉元の命のろうそくを齧ろうと歯をカチカチ鳴らします。
アシㇼパさんには呪いの言葉を吐き、杉元にはこんな顔を見せて。
鶴見さん、本当の死神になってしまったの・・・?
汽車に乗ったまま、海に落ちていく二人。
汽車の先頭なんて、見ようによっちゃあ特等席。
杉元は「地獄行きの特等席だ」ってずっと言ってましたが、これ比喩じゃなくてまさか言葉通りの意味だったとは。
どんな時でも肌身離さず被っていた菊田さんにもらった軍帽、流されてしまいましたね。
白石の役目
身を挺してアシㇼパさんを受け取ったと思われる谷垣。
左半身が血だらけで、お腹の傷も開いちゃったみたいです。
それに引き換えたんこぶひとつで済んでる、さすが白石。
このたんこぶは多分アシㇼパさんの足が当たったからで、落馬のダメージは巧みな受け身でかわしたに違いない。
最後のコマで、白石海に飛び込んでますね。
前回も書きましたが、白石はこの場にいても戦力にはならない。
「投げられたアシㇼパさんを受け止める」のは谷垣ひとりでも多分良かった。
でも白石は馬で追いかけてきた谷垣に拾ってもらってここにいる。
だからきっと白石にはここでやるべき役目がある。
刺された杉元が海に落ちて絶望的な気持ちになりましたが、白石のおかげで、杉元が生きてる可能性あるな、と思えました。
シライシ、頼んだぞ。
・・・・・
最終話に向けてのシナリオはずいぶん前から決まってたんでしょうけど、今回の話はショックでした。
こういうドキドキが精神衛生上良くないから、私はここ最近は完結した漫画しか読まないことにしてたんですよ!(動揺からくる八つ当たり)
今は正直楽しむ心の余裕はないけど、物語としてはそりゃもう間違いなく、ピカイチにおもしろい。
ここまできたら最後まで見届けるしかない。
来週の最終話を読むまでは絶対死ねない。
交通事故とかに遭わないように気を付けよう。
万が一杉元が死ぬような最終話だったとしても、野田先生の描かれるものなら納得できるはず。
・・・と言いつつやっぱり杉元には死んでほしくないので、ここからは希望的観測に基づく妄想全開で杉元が生きてるルートを模索します。
なんの根拠もないし、最終話を予想しようとかでもないです。
ただ大丈夫って自分に言い聞かせたいだけ。
そうじゃないと来週まで身が持たん!
妄想に付き合ってやるか、と思える方はどうぞお進みください。
みみずく妄想劇場
杉元の胸を貫いた和泉守兼定。
貫通してるから二階堂兄弟との戦いの時みたいに肋骨でガード、は期待できない。
でももし心臓を一突きされてたら、さすがの不死身の杉元も即死ではなかろうか。
そう考えると、左胸ではありますが、心臓ど真ん中というより、位置的には心臓のちょっと上な感じしませんか?しますよね。
刺し傷って不用意に抜くとその時のショックで死に至る、とか聞いたことあるけど、心臓の場合は抜くとか抜かないの話じゃない気がする。
見た感じ髪の毛はがっつり逆立ってるし、動けてもいる。
とりあえず心臓近辺損傷、致命傷じゃないと仮定して話を進めたいと思います。
房太郎との戦いの時、白石は華麗なダイブを見せて船から落ちた杉元を助けに行きました。
その時は残念ながら返り討ち(?)にあい失敗しましたが、今回杉元は意識を失ってそうなのでうまくいく気がします。
あれはきっとこのための伏線だったに違いない。
杉元が刺されたコマ、切っ先が汽車にめり込んでるみたいに見えますね。
そうだとしたら、アシㇼパさんを投げるために身を起こした時、これは固定された状態で動いたってこと?うう、痛そう。
相手は金属だからそこまでがっつりは刺さってないと思うけど、これが刺さったままだとしたら、杉元の救出は難しい。
そしたらここは脱獄王の腕の見せ所。
なんらかのアイテムを持ってるか、もしくは器用な手先で刺さった刀を抜いてくれるはず。
ただ気になるのは杉元の右のポケットにまだ入っているだろう金塊です。
これ、結構重いと思うんですよね。
救出の妨げになるんだとしたら、ここはもうズボンを脱ぐしかない。脱ぎましょう。
和泉守兼定のアシストにも期待したい。
土方さんの魂のこもったこの刀。
土方さん、カムイコタンで「イペタㇺ」になるって言ってたじゃないですか。
人食い刀って言ってたからあんまりいいイメージないけど、沈んでも戻ってくる能力があるのは間違いない。
きっと役に立つって渡された和泉守兼定、ここまでいまいち本領発揮できてない気がする。
土方さん、力を貸しておくれ。
流れていってしまった軍帽。
杉元が今でも軍帽を被っているのは、心が戦争から帰ってこれていないからだと聞きました。
ここでその軍帽が脱げたことは「戦争の呪縛からの解放」を意味するのではないでしょうか。
軍帽と言えば杉元の分身、いや、杉元自身と言っても過言ではない。
この軍帽が杉元の代わりに地獄に行ってはくれないだろうか。
「前に進んだら」という菊田さん(弟)の言葉、杉元にもかけてあげてほしい。
一方の鶴見さん。
撃たれたのは胸っぽいですが、貫通してるし、どちらかというと右寄りでこちらも心臓を撃ち抜かれたわけではなさそうです。
鶴見さんに関しては、ここで退場となったとしても、遺体は見つからない気がします。
生死不明のまま時は流れ、いつか軍部の陰の黒幕みたいなポジションで復活しそう。
その隣に、もう月島はいないかもしれないけど。
月島には鶴見劇場、最後まで見てもらいたかったな。
・・・いやまだ最終話が残ってるからどうなるかわかんないですね。
野田先生が描かれる最終話、絶対おもしろいに決まってる。
そこは全然疑ってないです。
ただ私はもう誰にも死んでほしくないんですよ・・・。
つぎのお話の前夜祭
つぎのお話 第314話「大団円」
ひとつ前のお話 第312話「分け前」